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2006.11.28

「投信」の罠

 週刊ダイヤモンド(2006/12/2号)を購入しました。「投信」の罠として、投資信託が特集されています。

 記事の前書きには、

小額からでも、低コストで、プロの運用の成果を得られる。投資信託というのは本来、そんな金融商品であるはずだった。しかし、日本の現状はどうか?高コストの商品、投資家の勘違いに付け込もうとする商品が溢れ、投信会社は販売会社の顔色ばかり見ている。本特集は多くの投資家に成り代わって、「日本の投信はこれでいいのか」と問うていく。
 とあります。
 雑駁に申し上げて、本特集は投資信託に対して総じて批判的です。しかしながら、その批判は概ね的確であり、しかも平易で分かりやすい内容になっています。

 例えば、要注意の売れ筋投信として、
  ○毎月分配型投信
  ○Bシェア投信
  ○リスク限定型・元本確保型投信
  ○変額年金保険
  ○セット販売
  ○ファンド・オブ・ファンズ
  ○テーマ別投信
  ○バランス型投信
 が挙げられ、仕組みが紹介されています。

 実はこれらの投資信託、あまり知られていないことですが、投資家にとって不利なカラクリが隠されています。
 投資信託を購入している方にとっては、あまり知りたくない現実かも知れませんが、一読して損はなさそうな内容です。要するに、これらの投資信託は、金融機関が利益を得るための商品であり、投資家には、さほど利益をもたらさないのです。

 例えば、日本最大の投資信託である、グローバル・ソブリン・オープンのような、毎月分配型投信には、投資家が知らず知らず、手数料を掠め取られるような仕組みが内包されています。この雑誌では、それらの実態を分かりやすく説明しています。全体として、良心的な特集です。ダイヤモンド・ZAiを発行している会社の雑誌とは思えないほど(笑)。

 不利な金融商品に手を出さないための予備知識を得るための書籍には、

  1.お金をふやす本当の常識―シンプルで正しい30のルール
  2.金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか
  3.「投資バカ」につける薬

 などが挙げられます。

 基礎的なファイナンシャル・リテラシがあれば、不利な金融商品は見分けられるようになるかと思いますが、手始めに、週刊ダイヤモンド(2006/12/2号)を眺めてみるのも良さそうです。雑誌ということもあり、手軽に読み進められます。

 ところで、週刊ダイヤモンド(2006/12/2号)34ページには、気になる(というよりも、率直な感情として怒りすら覚えます)内容が掲載されていました。投資信託の信託報酬(保有期間中に投資家が支払う手数料)についての記述です。

 ”ミスター・グロソブ”山内一三・国際投信投資顧問副社長はこう答える。
「信託報酬を引き下げても、お客さんにとって、大したメリットにならないと思う。それよりは販売会社とともに、セミナーなどを通じた情報提供に力を入れていくべきだと考える」
 ・・・。
 ポジショントーク、ここに極まれりといった印象です。雑誌の掲載記事ですので、前後の文脈や正確な発言内容が不明ですが、詭弁のように思えて仕方ありません。

 信託報酬をはじめとした、手数料は投資家の手取り収益を著しく毀損します。山内一三氏がこの事実を知らないはずがありません。

 もちろん、運用会社が信託報酬などから利潤を得ていくことは必要です。
 とはいえ「信託報酬の引き下げが、お客(=投資家となるハズ)にとって大したメリットにならない」とは、失礼ながら、その見識や良識を疑ってしまいます。もしかして、「お客=販売会社」と考えているのではないかと、思ってしまうほど。

(「お客=販売会社」であるならば、それはそれで一つの考え方だとは思います。私はそんな運用会社とはあまり、お付き合いしたくありませんが)

 人気のある金融商品が、投資家にとってすばらしい金融商品とは限りません。
 私たちは投資家にとって不合理な金融商品を見分けられる程度の基礎的なファイナンシャルリテラシを身につけるべきだと思います。
 それは自分自身を護ることになりますし、不合理な金融商品を購入する人が減少すれば、それらを自然淘汰することにもつながります。

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2006.11.19

マネックス証券の「円建て債券 ~豪ドル償還特約付~」

 マネックス証券で、円建て債券 ~豪ドル償還特約付~という債券の取り扱いが開始されています。
 この商品、松本大氏のブログにおいては、仕組み債とのエントリにおいて、「比較的有利な商品である」と読み取れる説明がなされています。

 しかし、なんとなく「仕組み債」という言葉からは「投資家にとって不利じゃないの?」という雰囲気が漂います。この商品はお得なのでしょうか?

 商品の概要は、

■ 利率 年3.3%(税引前) 利払いは日本円で行われます
■ 1年満期 満期償還日:2007年11月28日(水)
■ お申込は10万円から
■ 満期時の元本(償還金)は、日本円または豪ドルでお受け取り(※)

※ 償還金のお受け取り通貨は、観察期間中の豪ドル/円の為替レート水準により決定されます。

 とのこと。満期時の受け取り通貨が、投資時点では未確定で、具体的には以下の条件によるようです。
・観察期間中、一度も当初より9円以上の円高にならなければ・・・ → 日本円で償還
・観察期間中、一度でも当初より9円以上の円高になると・・・ → 豪ドルで償還
 なるほど・・・。
 これを単純に解釈すると、

  ・円の価値が高まる円高にならならければ、円で償還。
  ・円の価値が高まる円高になれば、オーストラリアドルで償還。

 ということのように思えます。要するに、投資家にとって不利な通貨で償還がなされる仕組みです。
(商品のイメージとしては、大雑把にこれと似たような感じで捉えておくといいのかも)

 一応、観察期間中(投資期間中とほぼ同一の意味合いだと思われます)に一度9円以上円高になった後、為替が大幅な円安になれば得をするということはあり得るのでしょうが、さりとて、普通に外貨投資していれば、相応の為替差益は享受できます。
 別段、有利な商品ではなさそうです。

 こんなややこしい仕組みを活用するくらいなら、素直に豪ドルMMF(マネックスで取り扱いの豪ドルMMFは、現時点で年利5.4%程度)や、FX(為替保証金取引)を活用したほうがメリットが大きいのではないかと思います。
 仕組み債の「円で3.3%の金利」が有利であるとは思えません。円ベースでの元本が保証されているわけではありません。「元本+金利」のトータルで負けたのでは意味がない。

 普通に外貨MMF(豪ドル)に投資をしていれば、変動の可能性があるものの、当面は3.3%以上の金利を得られそうです。
 仕組み債を利用する価値があるのは、少なくとも「今後の日豪金利差が急速に縮小する」という見通しを持つ方などに限定されるのではないかと思います。その上で、為替の動向も読まねばならない。もっとも、そこまでの洞察力がある方ならば、仕組み債を活用するという結論には至らないでしょう。

 私たち個人レベルでは、シンプルな投資が一番だと思います。現状、円ベースで元本保証の年率3.3%運用なんてことはあり得ません。ないものねだりをしたって仕方がない。
 一見有利そうに思える「円の3.3%運用」の裏には、見えにくいリスクが潜んでいます。

 もちろん、外貨MMFやFXへの投資においても、コストやリスクは相応に負担することになります。円ベースの通常の預貯金では高金利は得られません。
 それでも、妙なカラクリが仕組まれた「仕組み債」よりは遥かにマシだと思います。

 私たちが仕組み債を利用するメリットはほとんどなさそうです。
 金融商品はいろいろありますが、広告などに「特約」とか「仕組み」という言葉が出現したら要注意ですね。


PS. この商品が「円建て債券」と称して販売されることには、違和感を覚えます。一般的な円建て商品のイメージと乖離があるような気がしてなりません。

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2006.11.13

投資信託のコストについて

 先週末(2006/11/10)の日経金融新聞のコラム、独眼複眼「投信、投資家利益優先に」から引用します。

▼「貯蓄から投資へ」の掛け声の下、世はまさに投資ブームだ。中でも投資信託の伸びはすさまじい。 <中略> 販売会社である証券、銀行などにとって投信はまさにドル箱的な存在になっている。
▼販社は本来顧客の資産状況、家族構成、将来計画などをもとに個人の資産選択に応じた商品を提供するのが役目だ。しかしこれは形式だけで、実際には数ある投信の中で販売手数料が高いものから順番に顧客に薦めることもあるという。類似の投信という商品の供給は市場がある限り容易であるため、運用会社より販社の立場が強くなりがちであり、運用会社からすれば販社の取り分を増やしても残高の増加が望ましいことになる。この両社が満足すればするほど、顧客の費用控除後のリターンは減少することになる。
<中略>
▼米国の投信は運用報告と同時に今後一定のリターンを仮定した上で、費用控除前と控除後のリターンの違いが明記された表が同封されてくる。投資家は費用のリターンに対するインパクトの大きさとファンドによる違いを一覧できる。
<以下略>
 コストの高いファンド・オブ・ファンズが人気を集めているなども含めて、投資家自身にとって不利な商品を選択している人が数多く存在していることを再認識します。
 私自身も含めて、山崎元氏が「投資バカ」につける薬で指摘するような投資家が数多く残存しているということの証左なのでしょう。

 かつてもこのblogで記事にしたことがあるのですが、高コストの投資信託で運用することはあまり合理的な選択ではありません
 そしておそらく、この事実を大半の投資家は、「なんとくなく・・・」しか認識していない。

 米国のように、「費用控除前と費用控除後のリターン違いを明記した書類の送付」が日本でも広く一般的になることを望みます。もしかすると「そんな書類は読まないよ」という投資家が大半かも知れませんが。
 投資信託という仕組みを利用する以上、相応のコスト負担は当然すべき。しかしながら、不当に高いとすら思える手数料率が設定され、その事実が積極的に公開されていないことについては、ある種の憤りすら感じます。

 今回も、投資に関する達観した見識を有する、チャールズ・エリス氏の言葉を引用しておきたいとおもいます。

彼らの仕事はあなたを儲けさせることではない。彼らの仕事はあなたから儲けることなのだ。
 もちろん、私たちは金融機関に手数料を払わねばなりません。しかし、それが自分自身にとって不合理だと感じるならば、あえてその金融機関(や高コストの商品)を利用する必要はありません。

 その金融商品のコストは投資家として許容できる範囲内でしょうか?

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2006.11.04

ロンドン証取、東証と提携協議

 ここ最近、東京証券取引所に関する報道が気になっています。

 例えば、本日(2006/11/04)の日本経済新聞はロンドン証取、東証と提携協議というニュースを伝えています。

 英ロンドン証券取引所が東京証券取引所に対し業務提携を申し入れたことが明らかになった。株価指数連動型の上場投資信託(ETF)の相互上場などを打診しており、東証側も協議に入ることで合意した。東証は米ニューヨーク証券取引所とも提携を協議しており、覇権争いの激しい欧米の有力取引所がアジア本格進出に向け、東証へのパイプづくりを競い始めた。

 先月にロンドン証取の幹部が東証を訪れ、提携を申し入れた。それぞれの市場に上場しているETFの相互上場などを通じて投資マネーの拡大を目指すほか、株式売買システムの共同開発、新興企業向け市場の活性化策など幅広く提携の可能性を探る。


 読売新聞は東証、ロンドン・ドイツ両証券取引所と提携協議へと報じています。
 東京証券取引所は4日、ロンドン証券取引所とドイツ取引所との業務提携協議を、それぞれ年内にも開始する方針を明らかにした。

 上場投資信託(ETF)の相互上場や、新しい上場商品の開発、システム整備に関する情報交換などを検討する。さらに、2009年までに予定されている東証の自社株上場後に、数%程度の株式を持ち合うことなども視野に入れる。

 東証はすでに、ニューヨーク証券取引所との業務・資本提携協議を始めているが、国際的な取引所再編の動きに対応するため、欧州を含めた幅広い提携先を模索する必要があると判断した。米最大の先物取引所であるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)との間でも、先物取引の活性化策などで業務提携を目指す考えだ。

 ロンドン、ドイツ両取引所は、成長著しいアジアの新興企業を取り込むには、東証との関係強化は不可欠と見ている。特にロンドン証取は、米ナスダック市場を運営するナスダック・ストック・マーケットからの買収提案を拒否するために、東証との関係強化を含めた新たな国際戦略を示す必要に迫られていた。

 今すぐに提携ということにはならないようですが、今後の推移に注目です。

 個人の資産運用においても、アセットアロケーションは非常に重要です。
 しかしながら、海外資産への投資は国内資産への投資と比較して、多少なりともコストと手間がかかるのが現実です。

 もしかしたら、ETFなどの相互上場などを通じて、私たち投資家に恩恵をもたらしてくれるかも知れません。国際分散投資がより簡単になるかも知れないのですから。日本企業への投資拡大や、東京マーケットの世界的な地位向上などに資することも考えられなくはありません。

 「証券取引所のガバナンスはどうあるべきか?」とかというような問題がありますので、提携を無条件に歓迎するわけにはいかないのでしょうが。

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2006.11.02

投信で運用する投信が大人気

 私たち投資家は、さほど賢明ではないのかもしれません。
 まるで、山崎元氏が「投資バカ」につける薬で指摘しているように。

 昨日(2006/11/01)の日本経済新聞夕刊1ページには、「投信で運用する投信、残高10兆円を突破、9月末、前年の2.1倍、低リスク型主流」という記事が掲載されていました。

 投資信託のうち、投信で運用するファンド・オブ・ファンズ(FOF)の残高が九月末、十兆円を突破した。株式や債券など多様な資産で運用する投信を運用対象とすることで、価格変動リスクを抑えたことが、安定した運用を希望する中高年の運用ニーズをとらえている。公募株式投信の残高が過去最高を更新するなか、新型投信が個人マネーの「貯蓄から投資」の流れを後押ししている。
 投資信託協会によると、九月末のFOFの純資産残高は十兆一千四百億円に達した。投信ブームを背景に残高はこの一年で二・一倍に増加。商品の本数も二百五十四本と同二七%増加した。
 FOFの中で、主流は分散投資して価格変動リスクを抑えたタイプ。価格変動率は日本株だけで運用する投信の半分以下だ。投資の入門的な商品として人気を集め、野村アセットマネジメントが株式と債券の投信に投資する「マイストーリー」の残高は十月中旬に一兆円を突破した。同社は自社で運用を完結するよりも他社も含め優良な投信で運用することで、より高いリスクの分散効果が期待できるとみている。
 最近では株や債券のほか、不動産や商品まで加えた多資産タイプも登場している。大和証券は十一月中旬に七つの資産の投信で運用する新商品「ライフハーモニー」を投入する。組み入れ先の投信選びは投信評価専門の大和ファンド・コンサルティングを活用。多資産タイプの投入は同社として初めてで、投資の初心者の開拓を狙う。
 このほか、ピーシーエー・アセット・マネジメントの「インド株式オープン」など新興国へ投資する商品も、FOF形式で設定するケースが多い。日本で新興国株の運用体制を一から組むよりも、現地の投信を活用して運用した方が効率的との判断が背景にある。
 FOFのデメリットは運用コストが割高になりやすい点。投信が投信に投資するため、手数料が二重取りとなる恐れがある。運用環境によって各投信の組み入れ比率も変わるため、全体の運用コストも分かりづらい。例えば大和の新商品は年間の管理手数料が契約資産の一・五三%(分配型)だが、場合によって〇・二%程度増減する。
 「貯蓄から投資へ」という流れ自体は悪いことだとは思いません。
 しかし、問答無用でNGなインチキ商品も含めて、投資家にとって不利な商品が大々的に販売され、それが多くの個人投資家に受け入れられる現状をいささか危惧しています。
(ねずみ講のようなインチキと、ファンド・オブ・ファンズを同列に比較するべきではないことは承知しています)

 つい先日取り上げた、新型預金が不利な商品の筆頭に上げられますし、引用記事にあるファンド・オブ・ファンズ(FOF)もそれに該当します。
 ファンド・オブ・ファンズは一般的に、手数料が非常に高く投資家にとって有利ではありません

 ファンドの素材(中身)は個別の株式や債券などです。
 ファンド・オブ・ファンズの素材はファンドです。

 食料品や日用品など、あらゆる商品は、生産者から消費者までの流通過程に存在する中間業者が増えれば増えるほど小売(末端)価格が上昇します。
 金融商品も同じことです。基本的には素材(個別の株式や債券)を直接購入するのがコスト的には有利です。少なくとも、ファンド・オブ・ファンズに投資するのはコスト的に有利ではありません。

 やや強引ですが、投資家のコストについて優劣をつけるならば、
  1.株式などへの直接投資
  2.ファンドへの投資
  3.ファンド・オブ・ファンズへの投資
 という順序になります。

 もちろん、ファンド(投資信託)を通じての投資行動にはそれなりの合理性(比較的少額で分散投資が可能になりますし、投資対象によってはファンドを活用せざるを得ないものもあります。そして何より、お手軽なことは事実です)がありますので、一概に否定するものではありませんが、ファンド・オブ・ファンズのような商品が人気と資金を集めてしまうような状況があまり健全とは思いません。

 コストは確実な、実質リターンの低減要因です。
 投資先の金融商品のコストについて、もう少し真剣に検討してもバチはあたらないと思います。

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